白内障手術 まにあっく編 その1
今回は、白内障手術における切開創の大きさについて、説明していきます。
ずーっと昔は、水晶体をまるごと取り除いておりました。水晶体は、直径10ミリ程度あります。そのため、切開創は、水晶体より少し大きい12ミリくらいが必要でした。
12ミリというと、黒目と白目の境目を上半分くらい切るようなイメージです。
その後、超音波乳化吸引術という画期的な技術が登場しました。これは、水晶体を超音波で砕き、小さくした水晶体を吸い取る、というものです。この機器の登場により、切開創を大幅に小さくすることが可能となりました。
すると、次は眼内レンズが切開創の律速段階となりました。
眼内レンズは、直径6ミリ程度あります。これをそのまま入れようとすると、切開創は6.5ミリくらい必要でした。
そんな中、二つに折りたたんで入れることができるという、画期的な眼内レンズが登場しました。これにより、切開創は4ミリで可能となりました。
さらに、インジェクターが登場しました。これは筒状の機器で、眼内レンズをより小さく折りたたんで入れることができます。
私が医者になった20年前、ちょうどインジェクターが登場し、普及し始めている時代でした。当時、切開創は3.2ミリが最小と言われていました。
その後の10年で、超音波乳化吸引と眼内レンズ・インジェクターの2つの機器が進化し、切開創は3.2ミリ→3ミリ→2.75ミリ→2.4ミリと徐々に小さくなっていきました。
これが実際どれくらいの大きさか、是非定規で2.4ミリの大きさを確認してください。
切開創が小さくなることで一番の変わったことは、糸で縫う必要がなくなったことです。これにより、手術時間が大幅に短縮しました。また、糸による術後の痛みがなくなりました。
さらに、術後の視力回復も早くなり、乱視の悪化もほとんどなくなりました。
まさにいいこと尽くめです。
超音波乳化吸引とインジェクターを開発した人たちに感謝しながら、手術をする今日この頃です。
白内障手術後は、3種類の目薬を使用します。
そこで、いままでなんらかの目薬を使用していた方より、
『いま使っている目薬はどうすればよいでしょうか?』
というご質問をよくいただきます。
当院では、
『原則中止』
としております。
理由は、間違えることが結構多いからです。
本来やるべき手術後の目薬をやっていなかったり、回数が少なかったり、左右間違えて使用していたりと、さまざまなケースを経験しております。
手術後の目薬は、術後感染症の予防などのため、大変重要です。それと比較すると、普段から使用しているほとんどの目薬の重要度は低くなります。
一方、緑内障で目薬がないと眼圧が上がってしまう、アレルギー性結膜炎がひどく、かゆくてこすってむしろ感染のリスクが高くなりそう、などのケースでは、一部の目薬を継続することもあります。
そのため、手術が決定した際、ご心配であれば確認いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
『糖尿病があるのですが、白内障手術はできますか?』
という質問をよく受けます。今回は、白内障と糖尿病につき、説明していきます。
まず、糖尿病は白内障を悪化要因とされています。
実際、糖尿病がある方で、白内障の進行が早い方がいらっしゃいます。ただし、白内障は加齢性変化のため、60歳以上の方の場合、白内障の進行が糖尿病のためか年齢のためか、鑑別することは困難です。
白内障手術が可能かどうかを判断するために、眼科ではHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)という数値を主に使用します。
外科などでは、
『A1Cが7.5%以下であれば手術は可能』
とされています。そのため、この基準を満たせば、白内障手術は可能と判断できます
A1Cが7.5以上の場合、白内障手術は低侵襲のため、手術を行うことは可能です。
しかし、糖尿病網膜症の悪化、感染や炎症の増悪など、リスクが高くなります。
そのため、もし今後糖尿病が改善する見込みがあり、白内障手術を急ぐ必要がない場合は、まず糖尿病のコントロールをしっかりとしてから、手術を相談するのがベストです。
一方、「白内障で視力が非常に悪く、日常生活が困難」や、「今後も糖尿病が改善する可能性が低い」などの場合、手術を先延ばしすることで、より条件が悪くなることが予想されるため、そのまま手術を行うこともあります。
その場合、手術のリスクが高いことを理解していただく必要があります。
糖尿病は目だけでなく、全身に悪影響を及ぼすため、体のためにもしっかりとコントロールされるのがベストであることは間違いないです
白内障の症状の一つに、「まぶしい」があります。
これは、白内障のにごった部分に光が乱反射することが原因と言われています。これは、白内障の初期に多い症状です。
一方、白内障手術後、まぶしさを訴える方がいます。これは、白内障によるにごりを取り除き、光が入る量が増えるためです。
白内障手術により、白内障を原因とするまぶしさは改善されますが、代わりに手術自体によるまぶしさがでてくることがあります。
結果として、手術でまぶしさが改善する方がいる反面、手術によりまぶしさが悪化したと感じる方もいます。
そのため、白内障によるまぶしさを取ることを目的として、手術することはお勧めしておりません。あくまでも、視力低下を改善することを目的として、まぶしさが取れればラッキーとしていただければ幸いです。
視力低下がない場合は、まぶしさを軽減するためにサングラスなどの使用を勧めております。
『白内障手術後、どれくらいみえるようになるんですか?』
白内障手術に関して、よく聞かれる質問です。
そして、正確にわかりやすく説明するのが、実は難しい質問でもあります。
今回は、この辺りを詳しく説明したいと思います。
まず、白内障手術の安全性はかなり高いものの、ごくまれに感染症などの重篤は合併症が生じることがあります。その場合、視力が低下することもあります。そのため、手術は視力改善を100%保証するものではありません。
次に、手術が無事終わった場合の術後視力は、目の他の部分(角膜、網膜、視神経など)の機能に影響されます。
他の部分が問題なければ、良好な視力が期待できます。しかし、白内障以外の病気(角膜混濁、緑内障、黄斑変性、網膜剥離などなど)があると、それらは白内障手術をしても治らないため、術後視力はその分は改善しません。
ただし、白内障以外にも病気がある場合、現在の視力に「白内障」と「それ以外の病気」が、それぞれどれくらい関与しているか、手術前に予測することは困難です。例えば、白内障と緑内障がある方で、視力低下の主な原因が白内障の場合は、手術によりある程度の改善が期待できます。一方、緑内障が視力低下の主原因だった場合は、手術をしてもあまり視力は改善されません。
また、白内障手術をする方は高齢者の方が多いため、検査上明らかな異常がなくても、各部の機能が落ちているため、視力が改善しない場合があります。
最後に、手術は問題なく、術後視力も改善しているにも関わらず、「手術しても視力が改善しない」と言う方がまれにいます。
原因は個々で異なりますが、手術前の視力が比較的良かった方や、昔視力がとても良かった方で、手術に対する期待値が高すぎる場合に起こりやすいです。
以上を踏まえたうえで、最初の質問
『白内障手術後、どれくらいみえるようになるんですか?』の答えとして
『手術して今より視力が改善することを期待するが、最終的にはやってみないとわからない』
という、あいまいな言い方になってしまいます。
白内障手術後は、いくつか生活制限があります。
今回は、特に質問の多い
『洗髪洗髪、運動水泳、運転』
について説明していきます。
手術後の一番の懸念事項は術後感染症です。
頻度は非常に低いのですが、起きると重篤な視力障害が生じる恐れがあります。
感染症予防に、水が眼内に入るのを防ぐ必要があります。
そのため、手術後四日間程度、洗顔洗髪ができません。
洗顔のかわりに、汗拭きシートや絞ったタオルなどをご利用ください。
洗髪は、美容院で上向きの状態で洗うのは可能です。(理容室は下向きなのでダメです)また、水のいらないシャンプーは可能です。(薬局に売ってます)
水泳は、目に水が入るため、1ヶ月は禁止です。
運動ですが、ウォーキング、ストレッチなどの軽い負荷なら、一週間で可能です。
一方、汗だくになるような激しい運動、力一杯に重いものを持ち上げるなどの負荷の大きい運動は、水泳と同じく1ヶ月程度控えた方がよいです。
運転は、術後視力の出方により異なります。
手術翌日から良好な視力が出る方々多いです。その場合、翌日から運転は可能ですが、見え方に慣れるまで、生活をしながら少し様子をみた方が安全です。
また、見え方に視力回復に一、二週間かかる場合もあります。また、眼鏡を合わせ直す必要があります。その場合、運転が出来るまで、少しお時間がかかります。
以上より、運動はいつから可能か、個人差が大きいため、念のため手術後しばらくは運転するご用事は入れないのが無難です。
一方、テレビやパソコン、スマホを見るなどの、目を使う作業は翌日から可能です。
その他に関しては、基本的に制限はないのでますが、こちらの想定していないこともあるかもしれませんので、手術が決まった際に質問して頂ければと存じます。
「白内障手術のとき、付き添いは必要ですか?」
という質問をよく頂きます。
今回は、こちらにつき説明していきます。
当院では、白内障手術後は眼帯をしています。眼帯は翌朝診察し、問題なければ眼帯は外れます。そのため、手術後の帰り道と、翌日の通院時は片目となります。
片目だと立体感が取りにくく、見えにくいなど不便を感じることも少なくありません。
家が近所で、片目でも歩行が問題なければ、付き添いなしで、お一人でも可能です。
一方、遠方の方、片目で不便を感じる方、転倒など心配な方は、お付き添いがいた方が安心です。
また、片目だと不便だけど付き添いできる人がいない、という方は、タクシーを利用する方法もあります。
手術終了後、こちらでタクシーを手配します。
お気軽にご相談下さい。
現在、白内障手術待機期間は1か月ちょっととなっております。
現時点では、手術の予約は一番早くて3月上旬となっております。
ゴールデンウイークがあり、4月下旬から5月上旬は手術ができないため、4月以降は手術が混雑することが予想されます。手術をご希望の方は、お早めにどうぞ。
白内障手術に関して
「手術は痛くないですか?」
「麻酔はどうやってするのですか?」
などのご質問をよく頂きます。そのため、今回は白内障手術における麻酔についてのお話です。
当院では、全例で白内障手術はめぐすりによる麻酔のみで行っております。
めぐすりのメリットは、麻酔薬の体内への移行量が微量なため、全身への副作用がきわめて少ないことです。また、時間もほとんどかかりません。
痛みに関しては、ほとんどの方は痛くなかったと言われます。しかし、たまに痛かったと言われる方もいます。
しかし、当院で痛みにより手術を中断した方は今のところいません。
一方、手術はベッド上でじっとしている必要があります。しかし、認知症や体の震えなどにより、じっとしていられない場合、局所麻酔での手術は困難です。そのような方には全身麻酔が必要となります。
全身麻酔では意識がないため、痛みはまったく感じません。しかし、入院が必要な上、全身麻酔自体にリスクを伴います。
全身麻酔は当院のようなクリニックではできないため、大学病院などの施設へご紹介します。
ちなみに、局所麻酔はめぐすりのほかに注射もあります。
白内障以外のほとんど手術は注射で行います。
注射はめぐすりと比べると、より長くより痛みが取れます。
一方、時間が余計にかかり、注射自体がちょっと痛い、というデメリットがあります。
院長が医者になった20年前は、注射が一般的で、全例注射をしていました。その後、技術や機器が進歩し、手術時間が短縮されたことで、注射のメリットがあまりなくなっていました。
そのため、10年ほど前より、めぐすりのみで手術を行うようになりました。
手術が痛いのでは、と心配される方が多くいらっしゃいますが、手術中強い光を当てるため、むしろまぶしい、のほうがつらいかもしれません。
白内障手術のおいて、日帰りと入院の違いや、どちらがよいのか、などの質問をよくいただきます。
よしだ眼科は入院施設がないため、日帰り手術のみです。
前の病院では、入院施設があり、日帰りと入院がちょうど半分半分くらいでした。
それらの経験を踏まえて、今回は日帰りと入院のメリット・デメリットなどにつき、説明してみます。
まず、手術の結果ですが、どちらも変わりありません。
そのため、医学的には白内障手術に入院の必要性はないと考えております。
日帰りのメリットは、余計な手間が必要ないことです。
私も以前、別件で自分が患者として入院・手術しましたが、事前に色々な手続きをしたり、行ったこともない病棟で不安になったり、隣の人のいびきがうるさくて寝れないかったりと、入院生活はあまり楽しいものではありませんでした。日帰りでは、入院に伴う問題がありません。
また、高齢者ですと、入院により生活環境が変わることで、精神状態が不安定になったり、認知症が進行したりすることがあります。日帰りでは、慣れたおうちで寝れるので、その心配がありません。
一方、入院のメリットは、手術前後の通院の必要がないことです。術後、眼帯をするため、片目になってしまいます。そのため、家が遠い、足が悪い、反対目が視力不良など、通院が困難な方に有用です。
また、夜中に痛みなど何かあったときの安心感があります。ただし、白内障手術は痛みが出ることは少なく、夜間に緊急処置が必要となることはごくまれです。当院では手術500件以上行っていますが、そのような案件は一度もありませんでした。
入院施設でも、夜間にオペ室が稼働できないところや、眼科医が常駐していないところも多く、結局は翌朝診察してからの対応となります。
というわけで、白内障手術は、まずは日帰りで手術することを前提として、様々な理由により日帰りでは難しい場合に、入院施設で行うことを検討する、という流れで検討いただければよいのではと考えております。