意を決してA氏へ再度電話しました。
私「この開業、やめさせていただきます。」
A氏「いまさら何を言っているんですか。みんな先生のためにがんばっているんですよ。もう、私が謝っただけではすまされませんよ。」
私「全責任は私が持ちますので、もう結構です。」
こうして、A氏との開業活動は幕を閉じました。
その後、今回の件に関与したすべての方々に事情を説明し、謝罪しました。
その中で判明したのですが、A氏は私の知らないところで、私が指示しているとウソを言って、勝手に契約日をはじめとした様々な段取りを行っていました。
皆さんのお話をまとめると、A氏は、このような嘘を積み重ねて緻密なスケジュールを組んでいました。しかし、S社やリーガルチェックなど、想定外の邪魔が入り、スケジュールが崩れました。すると、みんなに嘘を言っているために、説明や修正ができなくなり破綻したのでした。
信頼していた人間に裏切られ、人間不信になった私は、ステージ上でマイクを置いて、こう言いました。
「私、普通の勤務医に戻ります。」(百恵ちゃん風)
続く
リーガルチェックのは、難解でボリュームが多いため、本来であれば、専門家の説明を聞いて理解を深めたいところです。しかし、契約まで日がないため、そのような時間は残されていませんでした。
そこで、今回の結果をそのままオーナーに提出したうえで話し合いたい、とA氏に提案しました。すると、予想外の反応が返ってきました。
「そんなことしたら、この開業の話、潰れますよ」
A氏は、リーガルチェックはその内容を理解し、それを踏まえて不利益にならないよう気を付けましょう、というような趣旨の話をしていました。そんなA氏の言葉が、やけに遠くから聞こえてくるようでした。
とりあえず、その場はいったん電話を終了しました。
もはや一人では抱えきれなくなった私は、先輩のY先生に相談の電話をしました。そして、あの伝説のアドバイスをいただきました。
「うまくいくときは、びっくりするくらいすんなりいくもんだよ。今回は縁がなかったんじゃない」
その言葉を聞いて、ついに決意が固まりました。
続く
2016年8月7日
「リーガルチェック終わりました。」
待ちに待ったメールがついに来ました。
早速内容を確認したところ、目を疑いました。
そこには、契約書の中で、貸主に極端に有利な部分や、定義があいまいな部分などの指摘が、数十項目にわたり、びっしりと羅列されていました。すごいボリュームで読むのが大変で時間がかかるうえ、難解すぎてほとんど理解できませんでした。
しかし、なんとなく悪徳業者の例のヤツ、という印象を受けました。
同様のメールは、すでにA氏にも送られており、すでに読んでいるはずでした。
意を決してA氏に電話しました。
続く
8月4日は終わらない・・・。
すぐにA氏に電話しました。すると、
「その日程って、先生が言ってませんでしたっけ?」
と、とぼけた感じで答えてきました。
人間、相手にあまりにも堂々とされると、こちらが間違っていると思ってしまうものです。
そして、私が誤解を招くような言い方をしてしまったのかな、と考えてしまいました。
さらにA氏は、
「8月8日に内装業者の現地視察をお願いしているので、8月6日に契約していただかないと間に合いませんよ。」
と畳みかけてきました。ちなみに、内装業者の話も初耳でした。
次々と新しい情報が出てきて、もはやパニックを通り越して思考停止な私。気が付けば、内装業者の現地視察をずらせるのか、に論点移っていました。結局、
「さすがに明後日の契約は無理なので、8月10日に契約日を延期して、お願いします。」
という約束をしてしまいました。
とはいえ、8月10日に契約する約束をしたものの、すっきりと納得できたわけではありません。かといって、約束を破ることもできません。だれにも相談できないまま、眠れない夜を過ごしていました。
続く
2016年8月4日
事件は、不動産屋からの1本の電話から始まりました。
いままで、不動産屋とはA氏がやり取りしており、A氏を介さず私に直接連絡が来ることはありませんでした。なんとなく嫌な予感を抱きながら、電話に出ました。すると、唐突にこう言ってきました。
「8月6日の契約日ですが、何時にしますか?」
このときはまだリーガルチェック待ちだったため、契約自体がまだ確定していませんでした。まして、契約日を指定するなどありえません。あまりにもわけのわからない内容で、パニックになりながら、必死にそのことを説明すると、不動産屋は不機嫌な口調で
「A氏から、8月6日に契約するから、書類を用意しろと言われたから、徹夜で契約書を作ったんですよ!!」
というではありませんか。当然、私は契約書を作れとは、一言も言っていません。
訳が分からない中、すぐにA氏に確認の連絡しました・・・。
続く
S社とのミーティングを終えた私は、指摘された懸念事項などにつき話し合うために、A氏に電話しました。すると、いつもの穏やかな口調から一転、かなりきつい口調で
「開業するときは、反対勢力が出るものです!気にしてたら開業なんてできないですよ!!」
と一喝されました。
S社とは、開業活動に協力してもらうパートナーという位置づけだったため、反対勢力という言い方には、違和感を覚えました。
この時初めて、A氏への信頼が揺らぎ、この開業への不信感が生まれました。
一方、このままA氏の言うとおりにしないと、一生開業できない、という焦りもありました。
まさに引くも地獄、進むも地獄です。
そんな中、会計事務所の勧めで、物件の契約書のリーガルチェック(契約書を弁護士にチェックしてもらう)をし、問題なければ契約する、という方向で、A氏と話がまとまりました。
しかし、この後とんでもない大事件が起こりました。
続く
その日、S社と何度目かの面談がありました。待ち合わせ場所に行くと、S社の方たちは神妙な面持ちで、なんだかいつもと様子が違います。そして、開口一番
『先生、この物件は、いくつかの懸念事項があります!ここでの開業はやめたほうがいいです!!』
私にとって、寝耳に水でした。そして、S社の話は、いまにして振り返ると、まさに核心を得た話でした。
しかし、開業一直線と浮かれていた私は、この言葉に耳を貸すことができませんでした。
このとき、話を真摯に受け止め、冷静な判断をしていれば、あんな悲劇が起こることはなかったのですが・・・
続く
物件オーナーや不動産屋との交渉はA氏にすべてお任せしていました。
開業時期を来年6月で考えているとオーナーに伝えてもらったところ
「そこまで待てないので、来年1月までに開業してください。」
と言われたとのことでした。希望の日程の来年6月よりだいぶ早かったので、この物件を半分あきらめかけていました。
すると、A氏より意外な提案がありました。
「花粉の時期の2、3月の前に開業したほうが、患者数の立ち上がりがよいので、1月はむしろよいですよ」
そこで、A氏の提案を受け、1月にこの物件で開業する方向で、話を進めることにしました。
その後、矢継ぎ早にA氏から会計事務所、内装業者、広告代理店を紹介されました。
たくさんの大人たちに囲まれ、開業が一気に現実味を帯びてきました。
しかし、そんな中、とある業者からとんでもない情報が入るのでした・・・。
続く
数日後、A氏と共に物件見学へ行きました。
その物件は、内装が全く行われておらず、鉄筋などばむき出しの状態である“スケルトン物件”でした。
マンションのモデルルームへ行くような気分でウキウキしながら物件に足を踏み入れたのですが、むき出しの鉄筋に圧倒され、まったくイメージが浮かばず・・・。
でもぼんやりと鉄柱を眺めているとバカっぽく思われそうなので
「ここはオペ室にちょうどよさそうですね」
などと浅い発言を繰り返してしまいました。おそらく周りの大人たちは、
「こいつ、わかってねーなー」
と心の中で思っていたのではないでしょうか。
内見を終え、次に『診療圏調査』を見せてもらいました。そこには、1日患者数100人以上という景気のいい数字が並んでいました。
一気に開業への夢が広がりました。
そして、診療圏調査について無知だった私は、その調査結果のカラクリに気が付くことはできませんでした・・・。
続く
さまざまなところで開業について相談していたところ、開業支援を行っているという『A氏』を紹介されました。
初めての顔合わせで、A氏より
「先生の開業、無料でお手伝いさせていただきます。」
と言われました。
当時、同じようなことを言うものの、その後音沙汰なし、という人が多々ありました。
そのため、いつもの社交辞令として軽く受け流していました。
今まではそれっきりでおしまいだったのですが、なんと1週間後にA氏よりメールが届きました。
「先生の条件にぴったり合った物件が見つかったので、一緒に内見に行きませんか?」
ここでついに、開業活動が進み始めました。
しかし、今後あんなことになるとは、夢にも思っていませんでした・・・。
続く