手術当日は、午後1時40分までに受診していただきます。
手術の準備として、目薬とキャップの着用を行います。その後、順番で手術を行います。
手術の順番は、目の状態などから、事前にこちらで決めさせていただいております。
手術時間は、10分程度です。ただし、手術の準備と片付けがあるため、手術室での滞在時間は20分程度です。
手術後は、体調に問題がなければ会計して終了となります。
安全な準備のため、手術の方は同時刻にご来院頂いております。最後の方で、3時半頃に手術終了予定です。しかし、場合により終了時刻が遅れることがあります。
予めご了承ください。
まず、診察にて手術適応のある方に、手術の希望につき伺います。
手術希望がある場合、手術や術前検査の日程を予約していきます。
当院では、月曜と木曜の午後が手術日となっております。
また、手術翌日は、9時半から診察を行います。そのため、手術日午後と翌日午前中に受診の必要があります。
さらに術前検査のため、手術までに2回の受診が必要となります。
これらの日程をすべて決定した時点で、手術が決定となります。
なお、電話での予約や代理人による予約はできませんので、ご了承ください。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入します。
この眼内レンズに関して
『何年もつの?』
『入れ替えは必要?』
などの質問をよく受けます。そこで今回は、眼内レンズの耐久性についてのお話です。
眼内レンズは、理論上50~100年もつと言われています。
一方、眼内レンズは、登場してからまだ数十年しか経っていません。そのため、実際にどれくらいもつのかは定かではありません。しかし、今まで世界中で数多くの白内障手術が行われていますが、ほとんどの症例では、眼内レンズの耐久性に関する問題は生じていません。
ただし、数としてはわずかですが、例外もありました。
数年前の話ですが、ある会社製の眼内レンズが、手術して数年後に白くにごる、という現象が見られました。そのなかでも、混濁が強く、視力低下を来す症例に対し、新しい眼内レンズに入れ替える手術が行われました。
幸い、すでに原因も解明されており、現在の眼内レンズでは、そうならないように工夫が施されているので、安心してください。
以上より
『眼内レンズは一生もので、入れ替えは必要ない』
と考えて頂いてよろしいかと存じます。
白内障手術では、白く濁った水晶体を超音波で砕き、小さくしながら吸引していきます。
ここで使用する機械を
『フェイコマシーン』
と言います。
白内障手術の中で、この部分で一番トラブルが起きやすく、特に白内障が進行した症例では、難しくなります。そのため、フェイコマシーンの性能が、白内障手術に多大な影響を及ぼします。
私はいままで、ずっとアルコン社の歴代フェイコマシーンを使用していました。
私が眼科医になった20年前は、『マレニアム』や『アキュラス』でした。当時はかなり普及したので、40歳以上の眼科医なら、一度は使用したことがあるかと思います。
これらのフェイコマシーンでは、非常に進行した成熟白内障には歯が立ちません。そのため、そのような症例では、水晶体嚢外摘出術という、目の上半分を切開し、水晶体を丸ごと取り除く手術を行っていました。
次に、いまから10年ちょっと前に、『インフィニティ』が登場しました。
こちらは、前の二つとは格段に性能が良くなっており、感動したのを覚えています。成熟白内障でも対応可能となったので、インフィニティの登場以降、嚢外摘出術は一度も行っていません。
とはいえ、水晶体を破砕するのに非常に時間がかかるうえに、途中で詰まってしまうこともしばしばでした。そのたびにハンドピースに水を通したり、チップを変えたりと、結構大変でした。
そして、5年ほど前に、ついに『センチュリオン』が登場しました。
こちらは、破砕力がさらに強力になっており、成熟白内障ですら、ほとんどストレスなく対応できるようになりました。しかも、今までさんざん術者を困らせた詰まりもまったくありません。
手術が無事にできているのは、自分のテクニックのおかげ・・・ではなく機器の進歩のおかげだと、感謝しながら手術する日々です。
黒目の大きさをご存じですか?
直径約1.5cmです。
目の中にアプローチする眼科手術では、この中で操作をする、とても細かい作業となります。肉眼で見ることは不可能なので、手術用顕微鏡で拡大しながら手術を行う必要があります。
一般的に、カメラなどでズームすると、画質が悪くなります。しかし、画像がぼやけると、手術が困難になってしまいます。そのため、手術用顕微鏡の画質が、眼科手術では非常に重要となります。手術用顕微鏡の性能がよくなると、より精密な眼科手術をより正確で安全に行うことが可能となりました。
近年の眼科手術の進化は、手術用顕微鏡に支えられているのです。
眼科手術もいくつかの分野があり、求められる性能が異なります。そして、当院で使用している『ルメラi』は、白内障手術に特化した手術用顕微鏡となっています。
特徴は、『徹照』がとてもよいことです。
目に光を当てると、網膜で反射されます。網膜はオレンジ色なので、目の中がオレンジ色に見えます。これが徹照です。
徹照が一番力を発揮するのが、前嚢切開という工程です。
白内障は、嚢という透明な膜で覆われています。その前の部分である前嚢を丸く切り、その部分から器具を入れ、手術を行います。これを前嚢切開といいます。手術の工程の中でも初めの方のため、これがうまくできないと、以降の手術操作が困難になるだけでなく、後嚢破損や水晶体落下などの大きなトラブルにつながります。
嚢はサランラップみたいに無色透明です。そして、白内障は白く濁っています。そのため、特に白内障が進行している場合、前嚢はとても見えにくく、途中で見失うこともあります。
しかし、徹照が良いと、背景がオレンジ色になり、前嚢のエッジが浮き上がって見えるようになります。
それにより、前嚢切開で苦労することが格段に減りました。もちろん、その他の操作も立体的に良く見えるため、ストレスを感じることなく手術することが可能です。
今回は、白内障手術における超音波乳化吸引術についてです。
12ミリある水晶体を、そのまま2ミリ強の小さな切開創から取り除くことはできません。そのため、水晶体を小さくする必要があります。そこで、超音波で水晶体を砕き、小さくなった水晶体を吸引していきます。
これが超音波乳化吸引術です。
分かりやすく例えると、大きな岩をドリルで砕き、小さくしたかけらをホースで吸い取る、というイメージです。
そして、もし岩がものすごく硬いと、ドリルではびくともしなくなり、砕くのが困難になりそう、と想像できるかと思います。
白内障は進行するほど、水晶体は硬くなっていきます。そして、末期の成熟白内障ともなると、岩のように固くなることもあります。
20年くらい前までの機器では、成熟白内障の硬さに歯が立たないことが多かったです。そのため、成熟白内障に限っては、12ミリの切開創で水晶体ごと取り除くような手術をしていました。
現在の機器は、破壊力が格段にアップし、ほぼすべての成熟白内障でも対応可能となりました。そのため、ここ10年は、切開創の大きい手術はまったく必要なくなりました。
それに伴い、手術時間も大幅に短縮され、術者のストレスも軽減されました。
開発に携わった方々、ありがとうございます。
今回は、白内障手術における切開創の大きさについて、説明していきます。
ずーっと昔は、水晶体をまるごと取り除いておりました。水晶体は、直径10ミリ程度あります。そのため、切開創は、水晶体より少し大きい12ミリくらいが必要でした。
12ミリというと、黒目と白目の境目を上半分くらい切るようなイメージです。
その後、超音波乳化吸引術という画期的な技術が登場しました。これは、水晶体を超音波で砕き、小さくした水晶体を吸い取る、というものです。この機器の登場により、切開創を大幅に小さくすることが可能となりました。
すると、次は眼内レンズが切開創の律速段階となりました。
眼内レンズは、直径6ミリ程度あります。これをそのまま入れようとすると、切開創は6.5ミリくらい必要でした。
そんな中、二つに折りたたんで入れることができるという、画期的な眼内レンズが登場しました。これにより、切開創は4ミリで可能となりました。
さらに、インジェクターが登場しました。
これにより、筒状の入れ物に眼内レンズを折りたたんだ状態で入れることが可能となりました。さらに、インジェクターが進化しており、いまでは2ミリくらいの切開創で手術可能となりました。
2ミリがいかに小さいかを体感するために、定規で2ミリを確認してください。
切開創が小さくなったことで、『自己閉鎖』と言って、切開創が自然に閉鎖するようになりました。そのため、切開創を糸で縫う必要がなくなったことが、革命的でした。
これにより、手術時間が大幅に短縮しました。また、糸による手術後の痛みもなくなりました。
さらに、術後の視力回復も格段に早くなり、多くの方は手術翌日からベストに近い状態まで視力が出るようになりました。
まさにいいことばかりです。
超音波乳化吸引とインジェクターを開発した人たちに感謝しながら、手術をする今日この頃です。
今回は、白内障手術と糖尿病につき、説明していきます。
まず、糖尿病は白内障を悪化要因とされています。
実際、糖尿病がある方で、白内障の進行が早い方がいらっしゃいます。ただし、白内障は加齢性変化のため、60歳以上の方の場合、白内障の進行が糖尿病のためか年齢のためか、鑑別することは困難です。
白内障手術が可能かどうかを判断するために、眼科ではHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)という数値を主に参考にします。
外科などでは、
『A1Cが7.5%以下であれば手術は可能』
とされています。そのため、この基準を満たせば、白内障手術は可能と判断できます
また、A1Cが7.5以上の場合でも、白内障手術は低侵襲のため手術は可能とも言われおります。
しかし、血糖値が高いと、手術後に糖尿病網膜症の悪化、感染や炎症の増悪などのリスクが高くなります。
そのため、もし今後糖尿病が改善する見込みがあり、白内障手術を急ぐ必要がない場合は、まず糖尿病のコントロールをしっかりとしてから、手術を行うのがベストです。
一方、「白内障で視力が非常に悪く、日常生活が困難」や、「今後も糖尿病が改善する可能性が低い」などの理由から、手術を先延ばしすることが難しい場合もあります。その場合は、糖尿病のコントロールがあまりよくない状態でも、そのまま手術を行うこともあります。
ただし、手術のリスクが高いことを理解していただく必要があります。
糖尿病による糖尿病網膜症目で視力低下が生じた場合、視力の改善は困難になってしまうため、日頃から、しっかりと糖尿病のコントロールをしておきましょう。
『難しい白内障手術の話』シリーズ
成熟白内障とは、白内障が進行しすぎて、水晶体が真っ白もしくはまっ茶色に濁ってしまった白内障を言います。矯正視力は0.01未満と、ほぼ失明状態のことも少なくありません。
通常の白内障の手術は、比較的短時間で安全にできますが、成熟白内障では、手術が困難なことが多いです。そのため、手術時間が長くなり、合併症のリスクが高くなります。
さらに、成熟白内障では、目の奥である眼底が見えないため、網膜や視神経などに病気があるかどうか、手術前にはわかりません。そのため、術後に視力がどれくらい改善されるのか、手術前に予想することが困難です。
以上、まとめると、成熟白内障では、
①手術のリスクが高い
②術後視力が予想できない
という問題があります。そのため、成熟白内障まで進行する前に白内障手術をすることをオススメしています。
そもそも白内障は、徐々に進行する病気のため、定期的に眼科通院をしていれば、成熟白内障になるまで放置されることはまずありません。しかし、様々な理由で眼科受診が遅れることで、成熟白内障まで進行してしまうケースがあります。
そこで、予防策としては、眼科の定期的な通院と適切な時期に手術をすることが挙げられます。
特に60歳過ぎて、見えにくい、かすむ、などの視力低下を感じたら、我慢せずに一度眼科へ受診してみてください。
白内障手術をした後は、翌日の外来まで眼帯をする必要があります。しかし、反対目が見えない場合、良い方や目を眼帯してしまうため、生活に支障が生じます。
そこで、当院では、透明眼帯を使用しています。今のところ、手術後からよく見えると、概ね好評です。
ただし、手術直後の見え方は個人差があるため、家族などのサポート体制が不可欠です。そのため、一人暮らしの方など、生活に不安がある場合は、入院して手術を受けたほうが安心です。当院では日帰り手術のみで、入院ができないため、入院ができる病院へご紹介することも可能です。
大切な目ですので、一度ご相談ください。